遠回りが一番の近道 〜粗利改善の本当の始め方〜

「すぐに結果を出したい」その気持ち、とてもよくわかります
こんにちは。
「粗利を改善したい」「もっと利益を出したい」 そんな思いで毎日頑張っていらっしゃることと思います。
多くの工務店で今、こんな動きが見られます。
「DX化で原価管理を徹底しよう」 「コストカットの交渉術を学んで仕入れ値を下げよう」
そして、すぐに新しいツールを探したり、コストダウン交渉のセミナーに申し込んだり…。 その気持ち、本当によくわかります。今すぐ結果を出したいですよね。
でも、ちょっと立ち止まって考えてみませんか?
「なぜ粗利が出ないのか」その本当の理由を知っていますか?
工務店の粗利改善に取り組んできた経験から、こんなパターンをよく目にします。
営業の見積もりが甘いと思い込み、営業研修に投資したものの、粗利は改善しない。 実は問題は別のところにあり、施工段階での手戻りが多く、資材のロスや追加工数が発生していたというケース。
こんな例、身に覚えはありませんか?
- 見積もりに問題があると思っていたけど、実は仕入れ値の交渉不足だった
- 施工の効率が悪いと思っていたけど、実は設計段階での検討不足が原因だった
- 仕入れコストカットに注力していたけど、アフターサービスの改修費用が膨らんでいた
問題の本当の原因がわからないまま対策を打っても、それは「闇雲に薬を投与する」ようなもの。
あなたの会社の「痛みの正体」はどこにあるのでしょうか?
「なんとなく」で本当に良いのでしょうか?
「なんとなく営業が悪い」 「なんとなく施工に問題がある」 「なんとなく利益率が低い」
こんな「なんとなく経営」をしていませんか?
多くの工務店で粗利率の実態と認識にはズレがあります。「20%くらいあるはず」と思っていても、実際に計算してみると14%しかなかったというケースは珍しくありません。
年商3億円の会社なら、6%の差は1,800万円。決して小さな金額ではありません。
感覚ではなく数字で語れる経営、それが第一歩です。
PDCAの「C」ができていない典型的な例
【会議のやりっぱなし】
毎月の経営会議で「原価管理を徹底しよう」と決めました。しかし、次の会議では別の議題で盛り上がり、前回の決定事項の進捗確認はすっかり忘れられています。半年後、「そういえば原価管理どうなった?」という状況に…。
【形だけのチェックリスト】
施工品質向上のためにチェックリストを導入しました。最初は丁寧に記入していましたが、次第に「とりあえず全部〇」と形式的になり、本来の目的である品質向上という視点が失われています。
【消えゆく改善活動】
「毎朝15分間の改善ミーティングをしよう」と始めました。初月は全員参加でしたが、2ヶ月目には「今日は忙しいから…」と欠席者が出始め、3ヶ月目には参加者が半数に。半年後には誰も覚えていない行事になっています。
これらはすべて、PDCAの「C」が機能していない証拠です。
「計画(P)→実行(D)」はするものの、「確認(C)→改善(A)」のサイクルが回っていない…。 そして新たな「P」「D」を始める…これでは同じ失敗を繰り返すだけです。
「当たり前のレベル」を上げることが成功への近道
では、どうすれば効果的に「C」を機能させることができるのでしょうか?
それは、「当たり前のレベル」を上げることです。
ツールよりも大切なのは「当たり前の徹底」
実は、粗利改善の取り組みをしている中で、粗利もよく、100棟以上手掛けている工務店が使っていた原価管理ツールは、単純なエクセルでした。
最新のクラウドシステムでも、高価な専用ソフトでもなく、エクセル。 ここから学べるのは「当たり前の徹底」と「どこまで本気で取り組むか」が重要だということなのです。
どんなに優れたツールも、使う人の意識と継続する仕組みがなければ、宝の持ち腐れになってしまいます。逆に、シンプルなツールでも、徹底して活用すれば大きな成果につながるのです。
効果的な粗利改善会議の実践例
成功している工務店の多くは、次のようなシンプルなルールを徹底しています。
- 会議は絶対に休まない
- 社長も含め、全員参加が原則
- 日程調整が必要な場合は前倒しで対応
- 前回のタスク確認から始める
- 「誰が、何を、いつまでに」の形で記録された前回のタスクを最初に確認
- 未達成の場合は理由を明確にし、次のアクションを決める
- 数字で語る
- 「なんとなく良くなった」ではなく「先週より2.3%上がった」と具体的に
- 目標と実績の差異を毎回確認
- 新たなタスクは3つまで
- 欲張らない、できることだけを約束する
- 「誰が、何を、いつまでに」を明確に記録
この「当たり前」の積み重ねが、半年後には粗利率を5%程度向上させる結果につながることが多いのです。
実は最大の障害は...社長である可能性も
粗利改善の取り組みがうまくいかない最大の理由のひとつは、実は社長自身の行動にあることが少なくありません。
「今日は大事な客先があるから会議は欠席」 「あのタスクはちょっと後回しにして」
こうした社長の言動がスタッフのモチベーションを下げ、せっかくの仕組みを形骸化させてしまうのです。
面白い対策を取り入れた会社もあります。 「ルールを破った人は罰則として何かをする」というシンプルなルール。 社長がルールを破ったら社員に焼肉をおごる、などの軽いペナルティを設けることで、自然とルールが守られるようになっていきます。
改善の鍵を握るのは、実はあなた自身かもしれません。
最後に
遠回りに見えても、実は最短距離
粗利改善のための「最新ツール」や「コストカット術」も大切です。しかし、それらは「正しい経営管理の仕組み」があってこそ効果を発揮します。
今日から始めてみませんか?
- まずは現状を正確に把握する
- 定例会議を設定し、PDCAの「C」を徹底する
- 社長自らが率先して取り組む
一見遠回りに思える「経営管理力の強化」が、実は粗利改善への最短距離です。 小さな一歩から始めましょう。そして、その一歩を確実に積み重ねていきましょう。
粗利改善は一朝一夕でできるものではありません。しかし、正しい仕組みづくりから始めれば、必ず成果は表れます。
最初は面倒に感じるかもしれません。毎週会議をして、数字を確認して…。でも3ヶ月経った頃から、少しずつ成果が見え始めるでしょう。半年後には、この仕組みが会社の大切な資産になっているはずです。
利益が増えるだけでなく、社員の意識も変わり、会社全体が前向きになる。その変化を実感できるはずです。
遠回りが一番の近道。 それは、持続可能な粗利改善への確かな一歩なのです。